B型作業所の給料は、正直いくらだったか|月3,000円〜15,000円だった私の話

初めてB型作業所で工賃を受け取ったとき、封筒の中身は決して多い金額ではありませんでした。それでも、あのとき込み上げてきた嬉しさは、今でも覚えています。

B型作業所の給料について気になっているということは、もしかすると「工賃」という言葉自体、まだ聞き慣れていないかもしれません。

それは何もおかしなことではなく、当時の私も、通い始めるまでは工賃の仕組みも全国平均も、何一つ知らないまま飛び込みました。

この記事では、実際に10年以上前、B型作業所で工賃をもらっていた私が、当時の具体的な金額や仕組みを記憶をたどってお伝えします。

ただ本当に気になっているのは、金額そのものより「その金額のために、通う意味があるのかどうか」という部分かもしれません。

そこについても、当時感じていたことを隠さずに書いていきます。

目次

そもそも「工賃」とは何か。給料とは何が違うのか

「B型作業所は給料ではなく、工賃と呼ばれるお金がもらえる」と言われても、聞き慣れない言葉に戸惑うかもしれません。まずは工賃という言葉の意味と、全国的な相場を確認しておきます。

雇用契約を結ばない働き方だから「工賃」と呼ばれる

B型作業所では、事業所と利用者のあいだで雇用契約を結びません。

これは、B型作業所が障害者総合支援法にもとづく「就労継続支援」という福祉サービスの一つで、制度上、利用者は「労働者」ではなく「福祉サービスの利用者」として位置づけられているためです。

雇用契約がないため、労働基準法や最低賃金法の対象外となり、支払われるお金は「給料」ではなく「工賃」と呼ばれます。

もともと「工賃」という言葉自体、内職や手仕事の成果物に対して支払われるお金を指す言葉で、雇われて時間を切り売りする「給料」とは、成り立ちが少し異なるのです。

一方、A型作業所は雇用契約を結び、一般就労に近い働き方をするため、最低賃金以上の「給料」が保証されます。

工賃は労働の対価というより、生産活動を通じた社会参加の訓練に対する対価、という位置づけに近い仕組みです。

実際に自分の作業がどれだけお金になる感覚なのかは、このあとの実体験のところで詳しくお伝えします。

全国平均はどのくらいか

厚生労働省が公表している「令和6年度工賃(賃金)の実績について」によると、B型作業所の全国平均工賃は月額24,141円でした(出典:https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001637154.pdf)。

前年度の令和5年度は22,649円、その前の令和4年度は17,031円で、数字だけ見るとここ数年で大きく増えています。

ただし、この増加には令和5年度に工賃の計算方法が変更された影響も含まれていて、実態が急に良くなったとは言い切れない部分もあります。この点は、隠さずお伝えしておきたいところです。

1日4時間、月20日ほど通うと仮定して単純に時給換算すると、だいたい200〜300円程度になります(これはあくまで目安の計算で、公式に発表されている時給ではありません)。

都道府県によっても金額の差は大きく、この全国平均はあくまで一つの目安として捉えてください。

制度としての工賃の全体像を踏まえたうえで、次からは実際に私がB型作業所でもらっていた工賃について、具体的にお話しします。

私が実際にもらっていた工賃は、月3,000円〜15,000円でした

全国平均を確認したところで、ここからは私自身の話です。B型作業所に通っていた当時、私の工賃は月によって3,000円から15,000円ほどの幅がありました。なぜこれほど差があったのか、順番にお話しします。

週5日、5〜6時間というペースで通っていた

当時は月曜日から金曜日まで、週5日通っていました。作業所にいた時間は1日5〜6時間ほどでしたが、これはあくまで滞在していた時間です。

実際に手を動かして作業をしていた時間は、日によってかなり差があり、だいたい1〜3時間ほどだったと記憶しています。

工賃の計算対象になるのは、この「作業所にいた時間」ではなく「実際に作業した時間」の方でした。

次にお話しする仕組みが関係しています。

工賃は「作業時間×作業ごとの単価」で決まっていた

私が通っていたB型作業所の工賃は、作業した時間に、その作業ごとの単価をかけて計算される仕組みでした。

同じ1時間でも、単価の低い作業と高い作業では、もらえる金額がまったく違います。

単価が低いのは基本的に簡単な作業で、単価が高いのは、難易度が高いというよりは、正直めんどうな作業であることが多かったです。

また、同じ作業を1時間でどれだけの量こなしたとしても、工賃は変わりませんでした。慣れてきて、同じ時間でより多くこなせるようになる上達の実感はありましたが、それが工賃に反映されることはありません。

1時間で10個作ろうが20個作ろうが、工賃は同じ。生産量そのものは工賃に反映されない仕組みだった、ということです。

単価は作業内容や月によって変わった

作業内容は、紙にスタンプを押していく内職や、オリジナルのお茶を作る作業、決まった曜日に地域を回るビラ配りなどがありました。

スタンプ押しは単価が低く、お茶作りは比較的高め、ビラ配りは週1回ほどでしたが、一番稼げる作業でした。

さらに、お茶がよく売れた月は、お茶作りの単価そのものが上がることもありました。

自分がどれだけ頑張るかだけでなく、事業所の売上という自分にはコントロールできない部分にも、工賃は左右されていたわけです。

だから、作業をしなかった日の工賃はゼロだった

この仕組みなので、作業所に行っても作業をしなかった日は、工賃は0円でした。

体調が悪くて手を動かせなかった日、気分が乗らなかった日は、そのまま金額に反映されます。

これが、月によって3,000円から15,000円という幅が生まれていた一番の理由です。

典型的な月は、1万円前後だった

振れ幅だけを見ると不安になるかもしれませんが、典型的な月で言えば、だいたい1万円前後でした。

私はたまたま単価の高い作業を担当することが多かったので、無理に長時間作業しなくても、この金額に届いていました。

極端に少ない月も多い月も、あくまで幅の両端であって、普段はその中間あたりに落ち着いていた、というのが実感です。

ちなみに、利用料の自己負担はなく、工賃から目減りすることもありませんでした。ただし昼食代は基本的に自分持ちで、お弁当を持参するかコンビニで済ませることが多かったです。

ただ、この金額を見て「それだけのために通う意味があるのか」と感じる方もいるはずです。その気持ちについては、次で正直にお話しします。

この金額のために、通う意味はあるのか

ここまでの数字を見て、「この金額のために、通う意味なんてあるのだろうか」と思われた方もいるかもしれません。たしかにそのとおりで、これは軽く流せる問いではないと思います。

月に数千円から1万円台の工賃のために、朝から夕方まで通う。普通に働いている人と比べたら、明らかに割に合わない選択に見えるかもしれません。

今、あなたの頭の中には、友人や兄弟姉妹の「普通の給料」が浮かんでいるかもしれません。その比較がつらい、という気持ちは、想像することしかできませんが、決して的外れな感覚ではないと思います。

ただ、当時の私には、比べる対象そのものがありませんでした。長くひきこもっていた期間があり、B型作業所が人生で初めての「働く」経験だったからです。

友人の給料と自分の工賃を並べて考えるような余裕も、経験も、当時の自分にはありませんでした。

それに、より正確に言えば、当時の自分にとっては、そこしか行く場所がなかったというのが実情でした。「通う意味があるかどうか」を天秤にかけられるほど、他に選べる場所があったわけではなかったのです。

これは強がりでも開き直りでもなく、単純にそういう状況だった、というだけの話です。

では、その判断材料がないまま受け取った工賃を、当時どう感じていたのか。次の話からお伝えします。

初めて工賃をもらった日のこと

初めて工賃を受け取った日のことは、正直、細かい部分まではあまり覚えていません。ただ、いくつか鮮明に残っている場面はあります。

工賃は現金で、封筒に入れて渡されました。名前を呼ばれ、一人ずつ個室に入り、職員さんから直接手渡しでもらう形式です。

誰かの前でまとめて渡されるのではなく、一人ひとり個別に呼ばれるという、そのやり方自体は今でも覚えています。

封筒の中身は、決して多い金額ではありませんでした。それでも、頭に浮かんだのは単純な感情でした。

自分の力でお金を稼いだことが、それまで一度もなかったからです。少なかったけれど、それが自分の作業の対価として渡されたという事実だけで、素直に嬉しかった。

それ以外の細かい感情は、正直あまり覚えていません。

この、飾り気のない小さな嬉しさを、私はその後も何ヶ月かかけて、少しずつ貯めていくことになります。何に使ったのか、続きは次の話です。

貯めたお金で買った電子辞書の話

貯めた工賃で、印象に残っている買い物が一つあります。電子辞書です。

何ヶ月か工賃を貯めて、確か2万円か3万円くらいのものを買いました。

当時は、英語とドイツ語を勉強しようと思っていて、特にドイツ語には興味を持っていました。実際、2ヶ月ほどは真剣に取り組んでいたと記憶しています。

工賃という少ない金額でも、こつこつ貯めれば、自分がやりたかったことのために使える。当時の自分にとって、これは小さいながらも確かな実感でした。

パーっと使ってしまった記憶はなく、基本的には貯金していたように思います。

月に数千円から1万円台という金額でも、時間をかければ、自分の意志で選んだものに手が届く。前の章で書いた「通う意味があるのか」という問いに対して、これは小さいながらも一つの答えだったのかもしれません。

ちなみに、その電子辞書は今、父に譲りました。当時、B型作業所の工賃で買ったものが、形を変えて今も家族の手元にある。そう考えると、少し不思議な気持ちになります。

ただ、これだけで「だから意味があった」と言い切るのは、少し違う気もしています。それを言えるのは、もう少し先の話です。

今のA型の給料を知っているから言えること

今、A型作業所で月10万円近くの給料をもらうようになった自分から見れば、当時のB型作業所の工賃は、正直、安かったと思います。

A型作業所の給料は、最初こそ時給700円台、月7〜8万円ほどからのスタートでしたが、それでもB型時代の工賃と比べると、一桁の差です。

月に数千円から1万円台という金額は、比べれば比べるほど、心もとなく見えてきます。

けれど、当時の自分にとっては、それで十分でした。何かと比較して安いと感じる基準そのものを、まだ持っていなかったからです。

働いたことがない人間にとって、「これが働くということなんだ」という実感の方が、金額の多い少ないより、ずっと大きな意味を持っていました。

だから、もし今、当時の自分と同じ場所に立っている人に一言だけ伝えられるとしたら、こう言うと思います。少しの金額でも、もらえるだけで嬉しいのだから、まずはやってみてほしい、と。

「安い」という今の自分の判断と、「これで十分だった」という当時の自分の実感。

このふたつは、矛盾しているように見えて、私の中では今もどちらも本当です。どちらか一方を選んで、きれいな結論にまとめるつもりはありません。

冒頭で書いた「通う意味があるのかどうか」という問いに、はっきりした答えを出すことは、正直できません。

ただ、当時の自分がそうだったように、今の金額だけを見て、意味があるかどうかを先に決めつけなくてもいい、とは言えると思います。

これからB型作業所に通おうとしているあなたへ

ここまで、自分が通っていたB型作業所での工賃について、具体的な数字と当時の気持ちをお話ししてきました。

ただ、私が知っているのは、あくまで自分が通っていた一つの事業所だけです。作業内容や工賃の仕組みは、事業所によってかなり差があります。この記事の数字は、一つの実例として受け止めていただけたらと思います。

もし今、これから見学や体験に行こうとしているなら、伝えたいことは一つです。

少ない金額でも、もらえるだけで嬉しいという感覚は、案外馬鹿にできません。まずは、その場所に足を運んでみることから始めてもいいと思います。

見学や体験の際に、工賃の仕組みについて具体的に質問しても、失礼にはあたりません。むしろ、自分に合うかどうかを判断するための大事な材料なので、遠慮なく聞いてみてください。

通ってみて、もし物足りなさを感じるようになったら、A型作業所や一般就労という選択肢も、後から考えれば十分間に合います。私自身、B型からA型へ実際に移りました。

その時の給料の仕組みについては、A型作業所の給料は上がるのか|10年働いてわかった、時給の仕組みという記事にまとめています。

また、限られた収入の中でどうお金と付き合っていくかについても、別の記事で詳しくお話しする予定です。

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