A型作業所の給料は上がるのか|10年働いてわかった、時給の仕組み

「A型作業所で働いたら、一体いくらもらえるんだろう?」

10年以上前、まだ右も左もわからないまま、作業所の扉を叩こうとしていた私も、同じ疑問を抱えていました。

求人票を見れば、時給と勤務時間、月の出勤日数から、大体の金額は計算できます。

それでも、こうしてA型作業所の給料について読んでいるということは、数字そのものよりも、もっと別の何かが気になっているのではないでしょうか。

「その金額を、本当にもらえるのか」「自分にその働き方ができるのか」という部分です。

私はA型作業所で10年以上働き続けてきた、1人の利用者です。

この記事では、制度としての説明ではなく、実際に10年間受け取ってきた給料の推移と、その裏にあった正直な実感を、飾らずにお話ししていきます。

目次

A型作業所の給料は、雇用契約と最低賃金で決まる

A型作業所は、事業所と雇用契約を結んで働く場所です。

雇用契約がある以上、労働基準法や最低賃金法が適用され、時給は原則として、その都道府県の最低賃金を下回ることができません(一定の許可を受けた場合の例外はありますが、対象はごく一部です)。

一方、同じ福祉的就労であるB型作業所は雇用契約を結ばず、支払われるのは給料ではなく「工賃」と呼ばれるお金で、最低賃金法の対象外になります。

この違いについては、以前A型とB型の両方を経験した立場から詳しく書いた記事があるので、気になる方はそちらもあわせて読んでみてください。

ここでは、雇用契約に基づく給料であるという前提のもと、実際に私が10年以上受け取ってきた金額の話に進みます。

なお、これから紹介する内容は、あくまで私が知っている1つの事業所の実感であり、すべてのA型作業所に当てはまるわけではありません。

求人票の時給と、10年間の給料の推移

求人票を見ても、本当にその通りの時給がもらえるのか、最初は低く抑えられていて慣れてから上がっていくものなのか、気になる方は多いと思います。

ここでは、私が実際にもらってきた時給の仕組みと、10年間で給料がどう変わっていったのかを、順番にお話しします。

求人票通りの時給で始まった

A型作業所は雇用契約を結んで働く場所なので、時給はその都道府県の最低賃金を下回ることができません。

求人票に書かれていた時給と、実際に働き始めてからもらった時給は、同じ金額でした。最初の時給は700円台で、これは当時のその地域の最低賃金そのものです。

もし提示された時給が最低賃金を下回っていれば、違法になってしまいます。

「最初は低い時給から始まり、慣れてきたら上がっていく」というような段階はなく、入所した初日から、求人票通りの時給がそのまま支払われていました。

時給が上がったのは、頑張りでも昇格でもなく、県の最低賃金の改定だった

時給は、その後少しずつ上がっていきました。ただ正直に言うと、これは仕事に慣れたからでも、リーダー的な立場になったからでもありません。

単純に、その年の都道府県の最低賃金が改定されたからです。たとえば、去年の県の最低賃金が1,000円で、今年1,050円に改定されたとします。

その場合、私が働いている作業所の時給も、同じように1,050円へ上がります。個人の頑張りやスキルの向上とは関係なく、時給そのものが県の最低賃金の数字と、そのまま連動している仕組みです。

入所前から「ここは最低賃金と同額の作業所です」と知っていたので、この仕組みに大きな不満はなく、「そういうものなんだ」という納得の方が強かったです。

10年間で、給料はこう変わった

10年以上前、働き始めた頃の時給は700円台で、月の給料は7万円から8万円ほどでした。今は時給が上がり、現在は1,000円台まで来ています。

出勤日数は月22日から23日ほどで、1日4時間勤務のため、月の給料はおよそ10万円弱です。

この出勤日数は基本的に事業所側の都合で決まっていて、通院などで休む日は融通をきかせてもらえますが、その分その月の給料は当然少なくなります。

10年間、給料が急に減った経験はありません。県の最低賃金が上がり続けているぶん、収入も少しずつ増え続けてきた、というのが正直なところです。

入所したばかりの頃、この時給をもらっていいのか不安だった

配属されたのは、工業用ミシンを使ってチームで縫製をする部署です。ミシンを踏む担当も、その補助をする担当も、当時の私にとってはすべてが初めての経験でした。

最初はペダルを踏むことすら怖くて、なかなか踏み込めません。恐る恐る、ゆっくりゆっくり縫っていくことしかできませんでした。

正直に言うと、そのとき感じていたのは「できるかどうか」という不安以上に、「この時給をもらっていて、いいのだろうか」という引け目でした。

時給はすでに最低賃金として保証されているのに、自分の作業量は、周りの人たちよりも明らかに遅れています。同じ時間働いて、同じ金額を受け取っているのに、自分だけ働きに見合っていないのではないか。そんな感覚がありました。

それでも、練習を重ねるうちに、少しずつできることが増えていきました。もともと物事が上達していく過程が好きな性格だったこともあり、「自分もやればできるんだな」と、自分で自分に感心したのを覚えています。

ペダルを踏む速さも、縫うスピードも、気づけば周りと大きく変わらないところまで来ていたと思います。

このときの引け目は、時間とともに少しずつ薄れていきました。

ただ、この感覚が完全になくなったわけではなく、形を変えて今も残っています。それについては、後ほど改めてお話しします。

リーダー的な立場になっても、変わらなかったこと

周りから新しい作業を任されることが増え、気づけば、今ではチームの中でリーダー的な立場になっています。

正式にいつからそうなったのか、実ははっきり覚えていません。一つのきっかけというより、少しずつそうなっていった感覚に近いです。

強いて言えば、一度A型作業所を離れて外で働いてみて、また戻ってきたあたりから、だんだんそういう役割を任されるようになった気がします。この経緯については、また別の記事で改めてお話しするつもりです。

ただ、リーダー的な立場と言っても、正式な役職名がついているわけではありません。給料も、これまでお話ししてきた通り、県の最低賃金に連動しているだけで、リーダーになったからといって上がるわけではありませんでした。

拘束時間も、大きくは変わっていません。準備などで多少増えたと感じることはありますが、それも自分から進んでやっていることなので、理不尽に負担が増えたという感覚はないです。

責任についても、あくまで私は利用者という立場なので、形式的には何も変わっていません。

多少の気疲れはあります。それでも、「そんなものだろう」と受け止められる程度で、しんどくてたまらない、というほどではありません。

体調を崩したとき、給料はどうなるのか

体調を崩して休んだとき、給料はどうなるのか、気になる方も多いのではないでしょうか。結論から言うと、私のところでは、休んだ日数分、単純に時給から引かれるだけです。

私は1日4時間勤務なので、1日休めば4時間分、3日休めば3日分の時給が、その月の給料から差し引かれます。休んだからといってシフト自体を減らされることはなく、次の出勤日からは、いつも通り仕事をするだけです。

ただ一度だけ、この仕組みが変わった出来事がありました。新型コロナウイルスに感染し、一週間以上休むことになったときのことです。長期間の欠勤だったので、正直、かなり給料が減ってしまうだろうと覚悟していました。

ところが、休みから復帰したあとに、管理者の方から「この期間は有給にするね」と声をかけていただいたんです。事前に決まっていたわけではなく、復帰してから伝えられたことだったので、驚きました。

嬉しかった理由は、金額の面だけではありません。覚悟していたほど給料が減らずに済んだこと自体、単純にありがたいと感じましたが、それ以上に嬉しかったのは、気にかけてもらえていたのだとわかったことでした。

もともとその管理者の方とは仲が良く、大事にしてもらっているという感覚自体は、かなりありました。

それでも、実際にこうして形のある行動として返ってきたことには、頭ではわかっていたつもりのことを、改めて実感させられるような驚きがありました。

ただ、これはあくまで私が知っている1つの事業所での話です。長期の休みをどう扱うかは、事業所によって対応がかなり違うと思います。同じように有給扱いにしてもらえるとは限らないので、参考程度に受け取っていただければと思います。

正直、もう少し欲しい。それでも満足している

入所したばかりの頃、私は「この時給をもらっていていいのだろうか」という引け目を抱えていました。10年経った今、同じ時給という軸に対して、当時とは逆の感覚を抱くことがあります。

正直に言うと、今の私は、自分の作業量が周りの利用者さんより多いのではないか、と感じる瞬間があります。

これは誰かに強いられているわけではなく、10年かけて自分ができるようになった結果、自然とそうなっているだけです。

もちろんこれは、あくまで私自身の感覚に過ぎず、実際に測ったわけではありません。それでも、同じ時給で働いている以上、同じくらいの作業量であってほしい、という気持ちがどこかにあるのだと思います。

同じ金額を受け取っているのに、自分だけ多くこなしている気がすると、もう少し欲しいな、という気持ちが湧いてくることがあります。

ただ、この気持ちを誰かにぶつけたいわけでも、不満として抱え続けているわけでもありません。今の作業量をこなせるようになったのは、自分がここまで積み重ねてきた結果でもあります。

そう考えると、「もう少し欲しい」という気持ちと、「ここまで働けるようになれて満足している」という気持ちは、どちらも本当の気持ちとして、私の中に同時に存在しています。

どちらか一方が正しくて、もう一方が間違っている、というものではないのだと思います。

きれいにまとめられない、正直な実感

時給×勤務時間×出勤日数で計算すれば、金額のおおよそは誰でも出せます。

それでも私がこうして言葉にしたかったのは、その数字の裏にある、10年間の実感の方でした。

時給は、頑張りやポジションの変化ではなく、県の最低賃金の改定に連動して上がってきました。

それでも、入所したばかりの頃の引け目と、今の「もう少し欲しい」という気持ちは、形を変えながら、ずっと私の中に残り続けています。

きれいにまとめられる話ではありませんが、これが今の、正直な実感です。

社会保険や厚生年金がどうなっているかについては、また別の記事で詳しくお話しします。

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